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2025/10/8

続・「精神科病院における携帯電話やスマートフォンの取り扱いについて」
通知文要約


期日:令和7年3月31日
発出者:厚生労働省社会・援護局 障害福祉部精神・障害保健課長
宛先:各都道府県・指定都市の精神保健福祉主管部
      文:管下の精神科病院に「携帯電等の取り組み事例について周知
        いただきたい」

通知内容: 携帯電話利用を実施中の8個所の精神科病院へのヒアリングから。

・所持・使用による課題 :
     他患者等に関する無断撮影、SNS 投稿等、プライバシー権侵害の
     おそれのある行為が見られた。
     問題となる行為があった場合、該当のデータや投稿を削除してもらう
     など個別に対応。
・事前の院内運用ルール作成 :
     院内撮影禁止。使用時間、使用場所を定める。機器の管理。
     ルールは文書、オリエンテーション、院内ポスターなどで周知を工夫。

・所持や利用制限なしに取り組んだ経緯や状況 :
     さまざまであるが、院長主導あるいは、スタッフ主導で開始した等。

・効果(実施している病院が感じたこと):
     患者自身が携帯電話を使用出来ることにより、入院中でも患者の
     人間関係や地域との交流を維持しやすくなり、入院への抵抗感の軽減や、
     患者の安心感の情勢につながると感じた。患者が自分でグループホーム
     等の関係機関を探したり連絡を取ったりすることができるため、患者自身
     の希望を反映した地域移行支援をより円滑に行いやすくなると感じた。
     患者の実生活に近い環境で入院治療をおこなえるため、携帯電話等を使っ
     た地域生活の練習や具体的な生活支援等へとつなげやすくなると感じた。
     トラブルが生じた場合も、社会生活上の課題を認識4する機会となった。
     携帯電話を自己管理する時にはスタッフ側の業務負担が軽減につながった。

 以上、通知の内容は、実施している病院の状況を紹介する、という形になっていますが、効果を詳しく紹介し課題解決には取り組むとして、携帯電話制限解除を推奨する意識を感じます。福祉新聞記事によりますと2024年6月に一般社団法人・人権精神ネットが、精神科病棟で一律に携帯電話使用制限するこがあれば不適切である、として厚労省精神・障害保健課長に、全国の精神科病院に通知することの要望書を提出しました(福祉新聞web 2024年6月19日)。今年3月にこの通知が出たことは、迅速な対応と考えます。
 また、現行の精神保健福祉法のなかで、「病院管理者は行動制限を行うことが出来るとされるが、電話に関しては、医療または保護の上に合理的な理由がある場合であって、かつ、合理的な方法及び範囲における制限に限られる」ことにも触れ、拡大的解釈で一律な行動制限を長期におこなうことに注意喚起をしています。

 

2025/10/2

精神科病棟入院と携帯電話使用 
3月の厚労省通知

「長く精神科病院入院中ですが、携帯電話が禁止されているので…」と聞くことがありました。治療上の行動制限を受けているか、自分の希望か詳細は不明ですが。今年3月、厚労省から「精神科病院における携帯電話やスマートフォンの取り扱いについて」という内容で各都道府県等に通知が出ました。携帯電話が所持できるようになって喜ばしいことと思っていましたが、運用についてはさほど進んではいないかもしれません。

通知の内容は、患者さんが携帯電話を使用している病院の現状を聞き取りまとめています。

・基本的には可能な限り携帯電話を自由に使用できることが望ましい
・携帯電話使用は、人間関係や社会との交流を維持し、安心感につながる
・一方、適切に利用するために工夫が必要

今回は通知文書を載せます。ややわかりにくいです。次回、抄録を予定します。

2025/9/17

精神科薬物療法の「終結」を語ることについて

紹介文献:

渡辺博幸「精神科薬物療法のアウトカムとエンドポイント」『精神医学―特集 精神医療は何をめざすのか―』67巻7号, p984-989, 2025年

本稿で取り上げられているのは、統合失調症、うつ病、双極症といった長期にわたり経過をたどりやすい精神疾患です。薬による治療は、急性期・回復期・維持期に分けて考えられますが、特に維持期では「当事者の幸福にどう寄与できるか」という視点が重視されています。

治療経過をふり返る際の目標として、著者は「薬剤の整理」「用量の減量」「可能であれば薬物療法の終結」を挙げています。また、服薬に関して本人の自己裁量を取り入れることの重要性にも触れています。

読後の感想:

私自身、精神科の薬をやめてあたりまえに社会生活を送っている人と数多く出会ってきました。しかし、これまで「薬をやめること」は公的な場で語られるのをどこかタブー視されてきたように思います。

今回の論考で「薬による治療を終える」という選択が明確に提示されたことは、今後、多くの患者さんや家族にとって大きな意味を持つでしょう。それは、薬を使い続けることだけが治療のゴールではなく、「やめること」もまた治療の一つのかたちとして知識に組み込まれていく過程なのだと思います。

2025日9月3日

緊急避妊薬販売について追記 

2025年8月29日付の信濃毎日新聞において、緊急避妊薬(アフターピル)が処方箋なしに薬局で購入可能になる特定要指導医薬品に指定される記事が掲載されました.処方箋なく入手できる体制に一足近づいたかもしれませんが乗り越えるべき問題は多いです.私はこの問題の経過を見守っている一市民として、以下2点補足します.

1.厚生労働省は、緊急避妊薬(具体的には「ノルレボ錠1.5mg」)を改正薬機法に基づき、「特定要指導医薬品」として承認しました。この区分では、オンライン販売は禁止され、販売時には薬剤師による対面での確認・指導が義務付けられます。17歳・18歳に対する保護者同伴の年齢制限は無くなります。

2.ただし、実施時期は未定で、現在は調査研究としての試験販売体制が継続中です。この試験販売では、16歳未満には販売不可とされ、16~17歳(18歳未満)は保護者の同意と同伴が必要です。長野県では、松本市内の限られた薬局が対象となっています。薬局の情報は「公益社団法人 日本薬剤師会の緊急避妊薬試験販売」専用WEBサイトを開き、購入希望者本人が必要な入力を行うことで得られます。試験販売を行っている長野県の4軒の薬局名がわかります。2025年6月では全国で335軒で、薬局名もわかります。

以上、私見ですが、現在長野県も含め国内では、ごく少数の薬局で薬剤師による指導と服薬支援のうえで薬が提供されている状況です。今後、年齢制限がなくなっても、県内全域への普及には時間と薬剤師の協力が不可欠であると感じます。今は医療機関受診が安全な方法です.

試験販売ホームページURL
https://www.pharmacy-ec-trial.jp

医療費助成制度に関わる過去の文献から



2025年5月17日

緊急避妊薬試験販売の現状
① 緊急避妊薬試験販売の報告
2025年5月14日、厚労省医薬局医薬品審査管理課、公益社団法人日本薬剤師会
より2023年11月~2025年1月間の試験販売の経過報告がホームページに発表されました.日本ではまだ経口避妊薬を薬局で購入できません.市販の適切性や発生する問題を検討する取り組みです.責任の機関は「緊急避妊薬の適正販売に係る環境整備のための調査事業(厚生労働省医薬局医薬品審査管理課委託事業)」と「公益社団法人日本薬剤師会」の二つがあげられています.対象の薬はレボノルゲストレルです.販売試験は2023年11月から全国145の薬局で始まり、2025年には339施設に増えました.長野県では松本市で4軒の薬局が参加しています.販売数は全国で6,813件、都道府県別では18~682件です.うち長野県は134件です.今回の結論では試験販売の継続となっています.「特定要指導医薬品」として市販化されることが目的ですが時期ははっきりしません.現時点では医療機関受診が安全な方法です.並行して児童、青少年への避妊法も含めた性教育や、ワンストップの支援者の充実です.
② 試験販売紹介のカードのこと
2024年8月、信濃毎日新聞デジタルは、「今すぐ妊娠を希望しない方への情報を集めました」と表示した名刺大のカードを発行しました.処方箋がなくても緊急避妊薬が薬局で買える試験販売へのアクセス方法を説明しています.対象者は16歳以上の女性、16、17歳は保護者の同伴が必要です.スマホやPCでQRコードからサイトに入ります.読み進めてゆくと、・医療機関で処方してもらう・薬局の試験販売で購入する、から薬局の試験販売で購入する→日本薬剤師会HP、を選びます.緊急避妊薬試験販売のサイトが出ます.説明の最後に、もう一度ご確認ください の枠内のアンケート項目にチェックを入れ研究に同意します.4軒の薬局名が表示されますので選択して電話連絡し、必要な手続きをします.
カードが無くても「緊急避妊薬試験販売」というサイトを開くと上記の手続きが可能です.
https://www.pharmacy-ec-trial.jp



信毎カード見本