「精神保健福祉法」について考える 一市民として

1.はじめに
 2022年12月に改正された精神保健福祉法(=精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)は今年、2024年4月から施行されています.改正後の内容では当事者の権利の保護や地域での生活支援を強化することを目指す傍ら、患者の同意の無い医療保護入院の継続や身体拘束の容認など問題を残しています。

2.改正内容で、注目点は次の9項目とされます

1)医療保護入院の期間の法定化と更新の手続き
2)家族等が同意・不同意の意思表示を行わない場合の取扱い
3)措置入院時の入院必要性に係る審査
4)医療機関における虐待防止の措置の義務化
5)虐待を発見した者から都道府県等への通報の義務化
6)地域生活への移行を促進するための措置
7)入院者訪問支援事業
8)自治体の相談支援の対象の見直し
9)市町村への支援に関する都道府県の責務
そのうち、1,2,3,7について述べます。法律についての説明文で固く感じますが資料の原文どおりに書きます。

1)医療保護入院の期間の法定化と更新の手続き

医療保護入院の入院期間は、最大6ヶ月以内で省令で定める期間とする。
入院中の指定医による診察の結果、患者に同意能力がなく、入院の必要があると判断した場合に限り、以下の要件を満たすことで入院の期間を更新できる。6月以内の範囲内の期間を定めた上で、継続入院させることとする。
要件:・対象患者への退院支援委員会の開催(入院継続に当たって必要な退院支援措置の検討)・家族等に連絡した上で、同意を確認(同意又は不同意の意思表示がないことの確認)・更新届の提出(定期病状報告は必要なくなる)
これまで医療保護入院者に関しては定期病状報告書の提出が12ヶ月ごとに必要であったが不要となった.・厚生労働省令で定める期間とは当該医療保護入院から6月を経過するまでの間は3か月とし、6か月を経過した後は6か月とする。
注;医療保護入院は入院後10日以内に書類により保健所を経由し精神医療審査会(都道府県保健センターに設置)に報告される。


2)家族等が同意・不同意の意思表示を行わない場合の取扱い

 当該家族等がどうしても同意・不同意の判断ができない場合には、家族等は意思表示を行わないこととすることができるようになる。
家族等の全員が意思表示を行わない場合には、医療機関は市町村⾧同意の申請ができるようになる
これまで医療保護入院には、家族等または市町村長の同意が必要。
この家族等に関して、どうしても同意や不同意が出来ない場合の対応が新たに定められた。
同意者に該当する家族が生存しているけれども数十年間顔を合わせたこともないなど、本人の利益を勘案して同意や不同意の判断をすることが難しいケースについて適応されうる。家族等は「意思表示を行わない」選択ができるようになり、それでも入院加療が必要と判断される場合に、市町村長に同意の申請を行うことができるようになる。



3)措置入院時の入院必要性に係る審査

従来の医療保護入院時の審査に加え、措置入院時にも精神医療審査会 において入院必要性に係る審査が必要となる。措置入院の必要性に関しても医療保護入院同様、精神医療審査会が審査する.
都道府県知事等は、法第 29 条第1項の規定による措置入院の措置を採ったときは、当該入院措置に係る入院中の者の症状その他厚生労働省令で定める事項を精神医療審査会に通知し、当該入院中の者についてその入院の必要性があるかどうかに関し、審査を求めなければならな
医療保護入院では「医療保護入院者の入院届」を都道府県知事に提出することによってなされ、その内容は精神医療審査会において入院が適切かどうか審査が行われる.
措置入院の場合は「措置入院に関する診断書」を都道府県に提出する。


7)入院者訪問支援事業

市町村長同意による医療保護入院者を中心に、本人の希望に応じて、傾聴や生活に関する相談、情報提供等を役割とした訪問支援員を派遣
都道府県等が訪問支援員を選任、研修等を実施。
「入院者訪問支援事業」は、市町村長同意による医療保護入院者等を対象に、外部との面会交流の機会を確保し、その権利擁護を図ることを目的とした制度である。
都道府県知事等が行う研修を修了した入院者訪問支援員が、患者本人の希望により、精神科病院を訪問し、本人の話を丁寧に聴くとともに、必要な情報提供等を行う。これは新たな事業として創設されたが、都道府県による任意の事業という位置づけである。



3.これから考えたいこと

 
この法律は1995年から運用され30年近いですが、法律により精神科医療が行われたのは1900年(明治33)精神病者監護法に始まり125年の長い歴史です.法律の本体は福祉施策と医療が混在する内容です.この法律の医療部分は一般医療に包摂するべきという意見があります.

・障害者制度改革推進会議(2010年に国際権利条約批准の準備で内閣府に臨時に設置され以後終了)では「精神保健福祉法及び医療観察法は、精神障害者について特殊な強制入院制度を設けており、後に見るように差別的な自由剥奪制度を維持する結果になっている。社会的統合化の理念から精神医療を特別視せず、総合的な医療法あるいは総合的な患者権利法の中に精神医療も統合化すべきである」という議論がなされています。

・全国精神病者集団では、「入院等決定が、精神保健指定医や家族等に権限と負担が集中する仕組みになっており、他科における意志決定支援のような協議モデルや責任の分散システムの採用が出来ません。国連障害者の権利に関する委員会からの権利に関する委員会からの勧告には、精神保健福祉医療が一般医療から分離する制度であり、解体が必要であるとされています。私たちは精神保健風刺法それ自体の解体に向けた議論を求める」としています。 2022年10月会のサイトから。

 

精神科医療が特別なものとして行われてきた歴史は長いです。加齢による身体合併症のリスクは高まり、また若年発症には十分な医療者により丁寧な治療と回復が望まれます。一般医療に包摂する必要性が高まっているものの困難な過程であることは誰の目にもあきらかです。今後はこのことを論じる意見を聞く機会も増えることと思います。自身も考え意見を持っておきたいと考えます。           


参考引用資料:

1.厚生労働省 令和6年4月施行の改正精神保健福祉法と精神保健に関する相談支援体制整備
2.全国精神病者集団 【声明】精神保健福祉法改正法案の閣議決定にあたって 2022年10月14日
3.きょうされん精神障害部会/共同創造の精神保健福祉をすすめる会 オンライン研修会 2024年9月19日
障害者権利条約/国連障害者権利委員会からの総括所見(2022.9)と日本の精神科医療 ―国際水準で見る日本の現実と課題―
報告①障害者権利条約と日本の精神医療・保健福祉 障害者権利条約が求める他の者との平等 障害者権利委員会が日本政府に勧告したこと
(報告②国連障害者権利委員会による総括所見を深堀する 総括所見と日本の現状・課題



厚労省からの市民向け変更点説明のパンフレット

精神保健福祉法がかわりました
https://www.mhlw.go.jp/content/001220086.pdf

 


新規作業所の見学 2023年1月5日記

2022年11月に開所した、就労継続支援b型の ”はなひらく” を見学しました.仕事は、室内型水耕栽培です.住所は、寿北7-10-11、バスでは松本バスターミナルから寿台線か松原線で、西原(にしはら)、で下車、すぐ前が事業所です.快く見学依頼を受けていただき、薬剤師・青年実業家を兼ねる小池所長、サービス管理責任者の優しい岡田さん、とお会いしました.就労支援は、診断を受けた後や、入院生活から退院後に社会生活への一歩として、精神的かかわりも求められる重要な場です.家族としてはご健闘をおねがいしたく思うことなど懇談し、作業の様子を見せていただきました.
 明るく広々としたスタッフルームから、白衣を着用し前室でエアシャワーを受けて細菌や埃を持ち込まないように注意して入った栽培場は、2mくらいの高さでしょうか栽培用キットが立ち並び、その間を行き来して作業が行われていました.10分程度の入室でしたが、高い天井、広々とした空間、透明な水の動く音、さわやかな緑の葉と、言葉がなくても伝達しあえる様子などを見、感じました.障害をもつひとの特質に、刺激の多い環境が苦しいこともあります.”はなひらく”が勤めやすい人がいると思いました.この事業所のことを知ったのは新聞の紹介記事です.もしその記事を読まなければ、まったく知らないで過ごしていました.当事者も家族も、ただ家で座っていては、新しいことを知ることは出来ないので、こまめに支援センターに行かなければならないとしたら制度の不備を感じます.自由に情報を得て、自由に選択した上で、手続きすることを希望する人々もいるはずです.このことについては今後も状況を探ってゆきたいと思います.はなひらくの詳細は同所のHPに詳しいです.URLを書いておきます.  anzu



https://fmi-hanahiraku.com/